← お知らせ・コラム一覧「デジタル遺言」から考える、声の残し方

「デジタル遺言」から考える、声の残し方

コラム音声配信

デジタル遺言の制度化をきっかけに、企業が経営者や創業者の言葉をどう残し、必要な人へ届けていくべきかを考えます。

2026年6月17日、成年後見制度の見直しとあわせて、いわゆる「デジタル遺言」の導入を含む改正民法が成立したと報じられました。

これは、相続や遺言に関する法律の話です。なので、この記事では法律の詳しい解説をするつもりはありません。そこは弁護士や司法書士など、専門家の領域です。

ただ、このニュースを見たときに、つなぐVoiceとしては少し違う角度で気になりました。

それは、人の意思や想いを、どう残し、どう届けるのかという話です。

今回の改正では、パソコンやスマートフォンを使って作成した遺言を、法務局で保管する新しい制度が創設されると報じられています。いわゆる「保管証書遺言」と呼ばれるものです。

従来の自筆証書遺言は、本人が全文、日付、名前を手書きし、押印する必要がありました。手書きであることは、本人の意思を確認するうえで意味がある一方で、作成する側にとっては負担にもなっていました。特に高齢の方や、長い文章を書くことが難しい方にとっては、ハードルが高かったと思います。

今回の制度は、そこにデジタルを使うことで、作成しやすくしようという流れです。もちろん、遺言なので、本人確認や意思確認は非常に重要です。報道によると、法務局が対面やウェブ会議で本人に遺言の全文を読み上げてもらい、本当に遺言をする意思があるのかを確認する仕組みも想定されています。

ここが、個人的にはとても印象的でした。

デジタル化と聞くと、紙をなくす、印鑑をなくす、手続きをオンラインにする、というイメージが先に来ます。でも、最終的に大事なのは、データになることではなく、その人の意思が確かに残ることです。

しかも、そこに「読み上げる」という行為が入っている。

これは、ただの入力作業ではありません。本人が自分の言葉として確認する。声に出して、内容を確かめる。そこには、テキストだけではない重みがあります。

もちろん、法的な遺言と、企業の情報発信はまったく別のものです。つなぐVoiceが遺言を作るわけでも、法的な効力を担保するわけでもありません。そこは混同してはいけません。

ただ、このニュースから見えてくる社会の流れは、企業にも関係があると思います。

人の言葉を、どう残すのか。

大切な意思を、誰に届けるのか。

必要なときに、きちんと見つけられる状態にしておくのか。

これは、個人の相続だけの話ではありません。

企業にも、残すべき言葉があります。

創業者の言葉。

経営者の考え。

事業を続けてきた理由。

会社が大事にしてきた判断基準。

危機を乗り越えたときの話。

次の世代に伝えたいこと。

こうしたものは、会社案内やWebサイトの文章だけでは、どうしても薄くなってしまうことがあります。

もちろん、文章は必要です。理念や沿革、方針を整理するには、テキストが向いています。映像も必要です。表情や現場の空気を伝えるには、動画が強いです。

でも、声で残す意味もあります。

話す間。

少し考えながら言葉を選ぶ感じ。

強く伝えたいところの熱量。

人柄。

迷い。

覚悟。

こういうものは、きれいに整えた文章だけでは残りにくい。

企業の中でも、世代交代や事業承継が進むと、「前の経営者が何を考えていたのか」「なぜこの事業を始めたのか」「なぜこの判断をしたのか」が、だんだん分からなくなっていきます。

資料は残っている。

議事録もある。

Webサイトにも理念は書いてある。

でも、その言葉がどういう温度で語られていたのかまでは、残っていない。

これは、もったいないと思います。

特に中堅企業やオーナー企業では、経営者の言葉そのものが、会社の文化になっていることがあります。朝礼での一言。社員に向けたメッセージ。苦しい時期に話した言葉。新入社員に毎年伝えている話。そういうものは、制度やマニュアルとは別の形で、会社を支えています。

ただ、それは意識して残さないと消えていきます。

口頭で話された言葉は、その場では力があります。でも、そのままでは流れていきます。誰かの記憶に残ることはあっても、次の世代に共有できる形にはなりにくい。

だからこそ、音声で残す意味があります。

つなぐVoiceは、音声をただ録音して置いておくサービスではありません。企業の中にある声を、必要な人に、必要な形で届けるための仕組みです。

たとえば、社長の月次メッセージを残す。

創業者インタビューを社内限定で配信する。

事業承継のタイミングで、新旧経営者の対話を残す。

部門長が、自分の言葉で方針を説明する。

社員に向けて、会社の歴史や判断基準を語る。

こうした音声は、外に広く公開するものではありません。むしろ、社内や関係者だけに届けるから意味があるものも多いです。

そこに、クローズド配信の価値があります。

誰でも聴ける場所に出すのではなく、必要な人だけが聴ける。

あとから聴き返せる。

誰に届いたかを確認できる。

反応を見て、次に伝える内容を考えられる。

これは、企業にとっての声の保管と共有だと思います。

今回のデジタル遺言の話も、単に「遺言がスマホで作れるようになる」というだけで見ると、少し狭く見えるかもしれません。

でも、もう少し広く見ると、社会全体が、大切な意思をデジタルで残し、必要な人に届ける方向へ進んでいるとも言えます。

紙に書いて保管するだけではなく、データとして残す。

ただ残すだけではなく、本人の意思を確認する。

そして、必要な人に存在を知らせる。

この流れは、企業コミュニケーションにも通じます。

企業も、言葉を出して終わりではなく、残して、届けて、受け取られたかを見る必要があります。

特に、経営メッセージや理念の共有は、一度話しただけでは浸透しません。Webサイトに載せただけでも足りません。社内報に書いただけでも、全員に届くとは限りません。

何度も伝える。

少しずつ残す。

必要なときに聴き返せるようにする。

この積み重ねが、企業の記憶になっていくのだと思います。

もちろん、音声にも注意点はあります。

何でも録ればいいわけではありません。

長すぎる話は聴かれません。

音が悪いと、内容以前に疲れます。

構成が弱いと、伝えたいことがぼやけます。

社内向けだからといって、雑に作っていいわけではありません。

むしろ、社内向けだからこそ、きちんと整える必要があります。

つなぐVoiceでは、企画、構成、収録、編集、整音、配信、視聴データの確認までを含めて考えています。映像制作会社として、長く企業の「伝えたいこと」を形にしてきたからこそ、音声でも、ただ話を録るだけではなく、伝わる形に整えることを大事にしています。

デジタル遺言は、法的な意思を残すための制度です。

つなぐVoiceは、法的な遺言を扱うサービスではありません。

でも、そこから見えてくる「大切な言葉を、デジタルで残し、必要な人に届ける」という流れは、企業にとっても無関係ではないと思います。

会社には、残すべき声があります。

今の経営者の声。

創業者の声。

現場の声。

次の世代に渡したい言葉。

それを、必要な人にだけ、継続して届ける。

デジタル遺言のニュースは、個人の相続だけでなく、企業が自分たちの言葉をどう残していくかを考えるきっかけにもなると思います。

本記事は、株式会社サイズビジョンが運営するつなぐVoiceの編集チームが、業界動向をもとに作成しています。

参考にした出典:

毎日新聞「『デジタル遺言』新設 相続手続きの円滑化図る 改正民法成立」

法務省「民法(遺言関係)等の改正に関する要綱案」

法務省「自筆証書遺言書保管制度について」

共同通信「成年後見、終身制廃止 デジタル遺言も、改正民法成立」

← 前の記事
なぜ今、クローズドポッドキャストなのか
← お知らせ・コラム一覧